米国ハーバード大学医学部のココア(カカオ)とクナインディアン研究についての記事です。

Cocoa shows promise as next wonder drug

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ココアは、心臓、脳、および他の器官への血流量を高める

欧米人が直面する大きな問題は、加齢に伴い、血圧が上昇し、心臓病や糖尿病の危険リスクを増加させることです。 パナマのカリブ海沖に住むクナインディアン(Kuna Indians)(クナ族)には、このような健康問題が存在しません。 ハーバード大学医学部放射線学教授ノーマン・ホレンバーグ(Norman Hollenberg)氏は、クナインディアン(クナ族)が、一日にココアを5杯以上飲むからだと確信しています。


ホレンバーグ氏は、ココアは、また、他の深刻な問題への答えかもしれないと考えています。 「研究から、脳への血流の低下は、アルツハイマー病を含む認知症、および脳卒中の両方の原因になっていることが示されている」と指摘しています。 数々の研究から、特定の種類のココアを大量に摂取することで、安価な方法でありながら、脳への血流を簡単に増加させることができ、危険な疾患リスクを減少させることができると指摘されています。


しかし、すぐに地元スーパーの飲料売り場に殺到しないで下さい。 ホレンバーグ氏の実験では、天然のココアで行われました。 消費者の嗜好に合わせて大規模な加工処理が施された市販商品のココアではありません。 天然のココアは、カカオ豆に含まれる抗酸化化合物(抗酸化物質)フラバノールと呼ばれる成分がぎっしりと詰まっています。 一方で、スーパーの食品棚に並ぶ市販のココアでは、加工の過程でフラバノールの多くが取り除かれています。

お菓子会社のマース社(Mars Inc.)は、ココアプロ(Cocoapro)と呼ばれるフラバノールが豊富な天然ココアとのギャップを埋めようとしています。 これまでの試験で、ココア4杯相当をわずか4日間続けるだけで、腕や指への血流が劇的に増加することがわかりました。 ホレンバーグ氏は、高血圧から動脈硬化、糖尿病へと至るまでの病気、あるいは、血管性認知症、および、妊娠中の女性に深刻な影響を与える子癇前症と戦い、人々を助けると主張しています。


クナのココア

ホレンバーグ氏がココアに興味をもったのは、1990年代初め、高血圧に対し、ヒトを保護する遺伝子を探している時でした。 論理的な可能性として、高血圧になりやすい悪い遺伝子があり、それに対して、高血圧になりにくくする良い遺伝子があるかもしれないと考えました。

この考えを実証するため、ホレンバーグ氏は、高血圧が稀で、年齢とともに血圧が上昇しない、孤立した人々のグループを見つける必要がありました。 そのような特殊な人々を見つけられれば、血液を採取し、比較することで、遺伝子のどの部分に差異があるのか突き止めることができます。

このような特殊な人々は、パナマのカリブ海沖の島々で生活することが知られており、500年以上にわたり、孤立、隔離された生活を営んでいました。

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しかし、ホレンバーグ氏の理論はうまく実証できませんでした。

近年になり、パナマ市とその近郊に移り住んだ数百のクナインディアンの人々の血圧を調べたところ、食事やストレス、および他の要因により、高血圧症に対する抵抗性が奪われていたからです。

結局、遺伝子が原因ではなかったのです。


彼らは多くの塩分を摂取していた?

ホレンバーグ氏は、クナインディアンがパナマ本土と島の両方に住んでいる場合、米国人以上に塩を消費するかどうかも調査しました。

バクスター財団(Baxter Foundation)からの資金で、ホレンバーグ氏は、その後、島民が食べるものや飲むものの研究を行いました。

最も際立った発見は、クナインディアンが主な飲料としてココアを消費し、毎日飲んでいるということでした」 「多くのクナインディアンは、高温多湿な気候の中で、おそらく一日あたり5杯以上ココアを飲んでいる」と報告しています。


マース社(Mars Inc.)によるテストから、クナのココアは、米国や西欧の店舗に売られているどの商品よりも、フラバノールが非常に豊富に含まれていることが明らかになりました。 市販の商品は、味と見かけを良くするため、カカオ豆の収穫後、様々な加工が施されていたことが原因です。

フラバノールは、赤ワインやお茶に含まれる成分として世界の注目を集めており、このフラバノールが、部分的に、心臓病のリスクを低下させ、寿命を延長することに寄与していると考えられています。


一酸化窒素の効果

別の大きな驚きは、研究室のテストで、クナのココアは、タバコの煙や自動車の排気ガス中に存在する一酸化窒素と呼ばれる悪名高い化合物を生成し、体を刺激することが明らかになったことです。


しかし、一酸化窒素には、良好な側面もあります。

「一酸化窒素は、体内の心臓、血管、脳、ペニス、肝臓、膵臓(すいぞう)、肺、眼、そして、おそらく他のすべての臓器で、動きの内部統制システムの一部であることが判明しました」 とハーバード大学医学部教授のトーマス・マイケル(Thomas Michel)氏は、述べています。 トーマス・マイケル氏は、一酸化窒素の驚くべき機能を解明した人物の一人です。 「一酸化窒素は、高血圧、動脈閉塞、うっ血性心不全、脳卒中、認知症、およびインポテンス(インポテンツ)のための新しい治療法につながる可能性のある汎用性の高いガスです」と述べています。

これを要約すると、一酸化窒素は、心臓、脳、および身体の他の臓器への血液および酸素の流量増加を可能にし、血管を弛緩させるはたらきがあるということです。 ホレンバーグ氏は、フラバノールが、遺伝子、または一酸化窒素をつくり出す遺伝子を活性化すると考えています。


脳梗塞と、いわゆる血管性認知症は、脳への血流が制限されて引き起こされます。 ホレンバーグ氏は、フラバノールが豊富なココアを、自然とこれらの病気の治療薬として考えるようになりました。 脳卒中は、世界の主要な死亡原因であり、アルツハイマー病を含む認知症は、65歳以上の人々の10%を苦しめている病気です。


フランスで、1,300人以上の高齢者で行われた研究では、フラバノール(フラボノイド)が、認知症のリスクを減少させたことが分かりました。 オランダの研究では、55歳以上の高齢者、1,730人が追跡調査されました。 結果は、脳への血流量の減少が認知症の発症に関与していることを示唆しています。

米国では、アルツハイマー病に急激に進行した高齢者は、特定の脳領域への血流量が問題になっていることが明らかになりました。 血流量の減少や逆流が、血圧の上昇や、加齢に伴う認知損失を招くという興味深い可能性を提起しています。


ホレンバーグ氏は、50才以上の健康な人々に、フラバノールが豊富なココアを飲んでもらう実験をしました。 高齢の人々でも、健康な若い人々にテストした時と同じように、血流量の増加が見られました。


高齢者の認知機能低下が、莫大な医療コストに膨れ上がっているのは公衆衛生上の問題です。 「チョコレートの神経生物学(The Neurobiology of Chocolate: A Mind-Altering Experience)により、認知症に伴う脳血流の低下を逆転させる治療見通しが、非常に有望である」とホレンバーグ氏は米国科学振興協会(the American Association for the Advancement of Science)の会議で語りました。


ホレンバーグ氏は、新しいタイプのフラバノール薬が、2型糖尿病と子癇前症を治療する、驚くべき可能性を説明しましました。 子癇前症は、先進国の女性の7%が苦しみ、アフリカの一部の国々では、その数が倍以上にもなります。 クナインディアンの女性では、これらの病気が非常に稀であることを、ホレンバーグ氏は指摘しています。


最後に、国際医科学ジャーナル(International Journal of Medical Science)の最新号の記事は、島々に残り、ココアを飲み続けているクナインディアンは、パナマ本土の都市や郊外へ移動したクナインディアンに比べ、 心臓発作、脳卒中、糖尿病、および癌などからの死亡率が、はるかに低いことを報告しています。


時代は、ココア(カカオ)ですね!

クナインディアンを見習って、一日5杯ですか?!

ショサイのチョコレート5個で大丈夫でしょうか?

足りない気がしてきました(笑)。


参照

Cocoa shows promise as next wonder drug - Harvard Gazette

クナ族 - コトバンク

カリブ海の島々 - yachting

パナマ - Wikipedia

Harvard University

ハーバード大学 - Wikipedia

Norman Hollenberg, MD, PhD - Brigham and Women's Video Center

アルツハイマー型認知症 - Wikipedia

ココア - Wikipedia

抗酸化物質 - Wikipedia

フラバン-3-オール - Wikipedia

フラバノール - コトバンク

フラボノイド - Wikipedia

Mars

Mars Center for Cocoa Health Science

血管性認知症 - e-65.net(イーローゴ・ネット)

脳血管性認知症 - 健康長寿ネット

2型糖尿病について - Lilly Diabetes

糖尿病 - Wikipedia

子癇前症(しかんぜんしょう - メルクマニュアル家庭版

子癇 - Wikipedia

Baxter International Foundation

一酸化窒素(NO) - Wikipedia

急性動脈閉塞症 - Wikipedia

うっ血性心不全 - gooヘルスケア

心不全 - Wikipedia

脳卒中ってどんな病気? - 厚生労働省

脳梗塞 - Wikipedia

International Journal of Medical Sciences

Flavanols in cocoa may offer benefits to the brain - International Journal of Medical Sciences

The American Association for the Advancement of Science